自分で書く!「永住許可申請の理由書」の書き方とそのポイントを解説。

 永住許可申請を含め、在留諸申請には多くの場合で理由書を添付しますが、理由書は入管法上必ずしも必要な書類ではありません。しかし、実務上はほぼ必須の書類です。永住許可申請書には永住許可を申請する理由を記載する欄はありますが、わずか数行の欄しかありません。永住許可申請は許可されれば、その後の在留期間の更新などが不要になり、在留状況に係る審査を受ける機会がなくなりますので、これまでの在留状況が総点検され他の在留資格に比べ特に慎重な審査が行われます。

 そのため、より丁寧に永住許可を申請する理由について説明をする必要があります。申請者に有利になりそうな点を積極的にアピールすることも大切ですが、仮に不利になるような点であっても隠さずに記載し、反省の意思や改善策などを伝えることが大切です。

 理由書は審査官が審査をしやすいように添付する参考資料です。単に審査官に評価されそうなことのみを記載するのではなく、たとえ申請者に不利になるようなことでも事実を隠さずに正直に記載し、永住許可申請を含む在留資格の申請は、真摯に向き合う態度が重要です。

 では理由書はどのように作成したらいいのでしょうか?どんなことを記載したらいいのか分量はどれくらいがいいのか?など、永住許可申請の理由書の書き方について解説します。

『永住許可申請の理由書に記載すること』

【経歴】

 経歴については、履歴書を書く感じで記載していきます。具体的には、本国での最終学歴から現在までの学歴や職歴です。転職等で職歴に空白期間がある場合には、その期間に何をしていたのかがわかるように記載し、空白期間が生じないようにします。

 職歴については、これまでの在留申請や現在の在留資格と矛盾がないように注意します。特に過去の在留申請時の申請書記載内容と異なる点がある場合には内容には注意が必要です。そのためにも、過去の申請書類のコピーは取っておくことをおすすめします。

 仮に、過去の申請書記載内容と矛盾する点があったとしても、慌てることはありません。正しい内容に訂正し、なぜ矛盾点が生じてしまったのかなどの経緯を正直に説明しましょう。ただし、申請に有利になるようにわざとその様な記載をしていたような場合は別です。

 その様な場合は、永住許可申請が不許可になるばかりではなく、虚偽の申請として罰則の対象となりますので、くれぐれもやめておきましょう。

【勤務先・仕事内容】

 現在の勤務先や行っている仕事の内容について記載します。仕事の内容についてはなるべく専門用語は使わずに簡単な言葉で説明するようにします。審査官が読んでも意味がわからないようでは理由書を提出する意味がないからです。

 現在、就労系の在留資格で在留している場合、仕事の内容が在留資格の要件に一致している必要がありますので、注意しましょう。また、現在無職の場合はその旨を記載し、生計を維持している方(配偶者等)の仕事について記載したり、申請者自身の再就職予定なども記載しておきましょう。

【年金・保険の加入状況】

 公的年金や社会保険の加入状況を記載します。日本は国民皆年金・皆保険の制度が取られ公的年金や社会保険への加入は法的義務になります。これは在留外国人にも等しく適用されますので、公的年金や社会保険への未加入の場合には永住許可の申請は不許可になるでしょう。直近5年間に未納や未加入の期間がある場合には、永住許可申請そのものを見送った方が良いでしょう。それ以前に未納や未加入の期間がある場合には、遡って納付できる部分は全て納付し、納付が遅れた事情などを丁寧に説明することで許可の可能性があがる場合もあります。

【資産状況】

 現在だけでなく、永住が許可された後もお金に困ることなく生活できるだけの資産があることを説明します。平均年収を上回るような収入があるような場合には、必ずしも必須条件ではありませんが、それでもある程度の預貯金等があればより安定した生活ができると判断されますので積極的に記載しておくことをおすすめします。

【日本語力・定着性】

 永住が許可されれば当然、引き続き長期間日本で生活をしていくことになりますので、日本語の能力や定着性も大切になります。日本語力については日本語能力検定などの資格で客観的に証明できればそれにこしたことはありませんが、そういった証明がない場合でも日常生活に支障がない程度なのか、仕事をする上である程度高度な会話もできるのかなど申請者の日本語力について記載します。また、職場での人間関係やご近所付き合い、町内の方との関わりなど、地域での定着性について記載します。

【身元保証人についての説明】

 通常、身元保証人には配偶者がいる場合は配偶者がなりますが、それ以外の者が身元保証人となる場合には、申請者との関係や身元保証人を引き受けることになった経緯などについて記載します。

【ガイドラインに沿って検討した事項(有利な点・不利な点)】

 入管が公表しているガイドラインなどに照らして、申請が適当かどうかを再度検討し、ガイドラインに適合していると考える点(申請者に有利な点)や、ガイドラインに適合していない、または、判断が難しいと考える点(申請者に不利な点)を記載します。

【その他の補足説明】

 その他、審査官に特に伝えておきたい事項があれば記載します。

『分量は?』

 理由書には特に文字数の制限はありませんが、あまりにも長すぎると読むのも大変ですし、逆に短すぎても何も伝えることはないのかなという印象を与えてしまいます。通常はA4用紙1~2枚分を目安に記載してください。

『専門家に相談を』

 以上のことを踏まえて作成すれば、自分で理由書を書くこともできるかと思います。それでもやはり難しい、不安、という方は入管法令に精通した専門家に相談・依頼することもご検討ください。

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