技能実習制度廃止⁉新たに創設される「育成就労(仮)」とは?

技能実習制度廃止⁉新たに創設される「育成就労(仮)」とは?

 現在行われている技能実習制度は技能実習法附則の規定により、施行後5年を目途に検討を加えることとされています。

 この規定を受けて開かれた、有識者会議の最終報告書案が提示されました。

育成就労(仮)の3つのポイント

 技能実習に代わる新たな制度は「育成就労(仮)」と呼ばれ次の3つのポイントに重点が置かれています。

  1. 外国人の人権保護…外国人の人権が保護され、労働者としての権利性を高めること。
  2. 外国人のキャリアアップ…外国人がキャリアアップしつつ活躍できるわかりやすい仕組みを作ること。
  3. 安全安心・共生社会…全ての人が安全安心に暮らすことができる外国人との共生社会の実現に資するものとすること。

育成就労(仮)の4つの方向性

  1. 技能実習制度は、「人材育成を通じた開発途上地域等への技能、技術又は知識の移転による国際協力を推進することを目的」としていますが、実態に即していない部分も多く、育成就労では、人材確保と人材育成を目的とする実態に即した見直しが検討されています。
  2. 我が国が外国人材から選ばれる国となるように、技能・知識を段階的に向上させ、その結果を客観的に確認できる仕組みを設けることで、キャリアパスを明確化し、育成就労から特定技能への円滑な移行を図ることが検討されています。
  3. 技能実習制度では、原則として転籍ができず、このことが労働者の人権を侵害しているとの批判が多い点です。育成就労では、人権保護の観点から、一定要件の下で本人の意向による転籍を認めるとともに、監理団体等の要件の厳格化や関係機関の役割を明確化することが検討されています。
  4. 日本語能力を段階的に向上させる仕組みの構築や受入れ環境整備の取組により、共生社会の実現を目指すことが検討されています。

有識者会議による10項目の提言

新制度及び特定技能制度の位置付けと関係性等

  • 現行の技能実習制度を発展的に解消し、人材確保と人材育成を目的とする新たな制度を創設すること。
  • 基本的に3年の育成期間で、特定技能1号の水準の人材に育成していく。
  • 特定技能制度は、適正化を図った上で現行制度を存続させる。 

※現行の企業単独型技能実習のうち、新制度の趣旨・目的に沿うものは適正化を図った上で引き続き実施し、趣旨・目的を異にするものは、新制度とは別の枠組みでの受入れを検討。

新制度の受入れ対象分野や人材育成機能の在り方

  • 受入れ対象分野は、現行の技能実習制度の職種等を機械的に引き継ぐのではなく新たに設定し、特定技能制度における「特定産業分野」の設定分野に限定する。※国内における就労を通じた人材育成になじまない分野は対象外。
  • 従事できる業務の範囲は、特定技能の業務区分と同一とし、「主たる技能」を定めて育成していく。
  • 育成開始から1年経過・育成終了時までに評価試験を義務付ける。
  • 季節性のある分野(農業・漁業)で、実情に応じた受入れ・勤務形態を検討していく。

受入れ見込数の設定等の在り方

  • 特定技能制度の考え方と同様、新制度でも受入れ対象分野ごとに受入れ見込数を設定(受入れの上限数として運用)。
  • 新制度及び特定技能制度の受入れ見込数や対象分野は経済情勢等の変化に応じて適時・適切に変更。試験レベルの評価等と合わせ、有識者等で構成する会議体の意見を踏まえ政府が判断。

新制度での転籍の在り方

  • 「やむを得ない場合」の転籍の範囲を拡大・明確化し、手続を柔軟化。
  • これに加え、以下を条件に本人の意向による転籍も認める

→計画的な人材育成等の観点から、一定要件(同一機関での就労が1年超技能検 定試験基礎級・日本語能力A1相当以上の試験(日本語能力試験N5等)合格転籍 先機関の適正性(転籍者数等))を設け、同一業務区分に限る

  • 転籍前機関の初期費用負担につき、正当な補填が受けられるよう措置を講じる。
  • 監理団体・ハローワーク・技能実習機構等による転籍支援を実施
  • 育成終了前に帰国した者につき、それまでの新制度による滞在が2年以下の場合、前回育成時と異なる分野・業務区分での再入国を認める。
  • 試験合格率等を受入れ機関・監理団体の許可・優良認定の指標とする。

監理・支援・保護の在り方

  • 技能実習機構の監督指導・支援保護機能や労働基準監督署・地方出入国在留管理局との連携等を強化し、特定技能外国人への相談援助業務を追加
  • 監理団体の許可要件等を厳格化する。

→受入れ機関と密接な関係を有する役職員の監理への関与の制限/外部監視の強化により独立性・中立性確保する

→職員の配置、財政基盤、相談対応体制等の許可要件厳格化。

  • 受入れ機関につき、受入れ機関ごとの受入れ人数枠を含む育成・支援体制適正化、分野別協議会加入等の要件を設定。

※優良監理団体・受入れ機関については、手続簡素化といった優遇措置。

特定技能制度の適正化方策

  • 新制度から特定技能1号への移行は、以下を条件。
  1. 技能検定試験3級等又は特定技能1号評価試験合格
  2. 日本語能力A2相当以上の試験(日本語能力試験N4等)合格

当分の間は相当講習受講も可 •試験不合格となった者には再受験のための最長1年の在留継続を認める

  • 支援業務の委託先を登録支援機関に限定し、職員配置等の登録要件を厳格化する /支援実績・委託費等の開示を義務付ける。キャリア形成の支援も実施併せて行う。
  • 育成途中の特定技能1号への移行は本人意向の転籍要件を踏まえたものとする。

国・自治体の役割

  • 入管、機構、労基署等が連携し、不適正な受入れ・雇用を排除していく。
  • 制度の所管省庁は、地域協議会の組織等を含む制度運用の中心的役割をはたす。
  • 業種を所管する省庁は、受入れガイドライン・キャリア形成プログラムを策定し、分野別協議会の活用等を行う。
  • 日本語教育機関の日本語教育の適正かつ確実な実施、水準の維持向上
  • 自治体は、地域協議会への積極的な参画等により、共生社会の実現、地域産業政策の観点から、外国人材の受入れ環境整備等の取組を推進していく。

送出機関及び送出しの在り方

  • 二国間取決め(MOC)により送出機関の取締りを強化していく。
  • 送出機関・受入れ機関の情報の透明性を高め、送出国間の競争を促進するとともに、来日後のミスマッチ等を防止する。
  • 支払手数料を抑え、外国人と受入れ機関が適切に分担する仕組みを導入。

日本語能力の向上方策

  • 継続的な学習による段階的な日本語能力向上を目指す。

就労開始前にA1相当以上の試験(日本語能力試験N5等)合格又は相当講習受講特定技能1号移行時にA2相当以上の試験(〃N4等)合格

※当分の間は相当講習受講も可特定技能2号移行時にB1相当以上の試験(〃N3等)合格

※各分野でより高い水準の試験の合格を要件とすることを可能とする。

  • 日本語支援に取り組んでいることを優良受入れ機関の認定要件とする。
  • 日本語教育機関認定法の仕組みを活用し、教育の質の向上を図る。

その他(新たな制度に向けて)

  • 政府は、人権侵害行為に対しては現行制度下でも可能な対処を迅速に行うこと。
  • 政府は、移行期間を十分に確保するとともに丁寧な事前広報を行うこと。
  • 現行制度の利用者等に不当な不利益等を生じさせないよう十分な配慮を行うこと。
  • 本人意向の転籍要件に関する就労期間について、当分の間、分野によって1年を超える期間の設定を認めるなど、必要な経過措置を設けることを検討すること。
  • 政府は、新たな制度等について、適切に情報発信し、関係者の理解を促進していくこと。
  • 政府は、新たな制度の施行後も、運用状況について不断の検証と見直しを行うこと。

最終報告を受けた今後の流れ

 政府は、今回の有識者会議の最終報告を受けて今後、必要な法改正手続きに入るべく法案提出・国会での審議が行われる予定です。新たな制度が国際的な理解を得て、我が国が抱える様々な問題を解決しつつ外国人材から選ばれる国になるとともに、外国人労働者の権利が十分に保護されるような制度となることを期待します。

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