改正入管法が公布!新設された「補完的保護対象者」とはどのような制度なのか?
賛否様々な議論を呼び、今国会で成立した「出入国管理及び難民認定法」(以下:入管法)
の一部を改正する法律が公布されました。(令和5年6月16日官報掲載)
今回は、改正入管法・第二条第三号の二に新たに加えられた「補完的保護対象者」について解説していきます。
(改正)入管法(定義)第二条 第三号の二 補完的保護対象者 難民以外の者であって、難民条約の適用を受ける難民の要件のうち迫害を受けるおそれがある理由が難民条約第一条A(2)に規定する理由であること以外の要件を満たすものをいう。
(難民の認定等)第六十一条の二 「補完的保護対象者の認定」
目次
改正第六十一条の二第二項により、補完的保護対象者の認定申請ができるようになります。また、改正第三項において、難民の認定をしない処分をした場合でも、補完的保護対象者に該当する場合、補完的保護対象者の認定を行うことが出来るとしています。
(新設)第二項 法務大臣は、本邦にある外国人から法務省令で定める手続きにより補完的保護対象者である旨の認定の申請があったときは、その提出した資料に基づき、その者が補完的保護対象者である旨の認定をすることができる。
(新設)第三項 法務大臣は、難民の認定をしない処分をする場合において、当該外国人が補完的保護対象者に該当すると認めるときは、補完的保護対象者の認定を行いことができる。
補完的保護対象者とは(改正入管法第二条第三号の二)
- 難民以外の者であって
- 難民条約第一条A(2)に規定する理由であること以外の要件を満たすもの
とされています。
難民条約第一条A(2)1951年1月1日前に生じた事件の結果として、かつ、人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができない者またはそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者及びこれらの事件の結果として常居所を有していた国の外にいる無国籍者であって、当該常居所を有していた国に帰ることができない者またはそのような恐怖を有するために当該常居所を有していた国に帰ることを望まない者。
二以上の国籍を有する者の場合には、「国籍国」とは、その者がその国籍を有する国のいずれをもいい、迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するという正当な理由なくいずれか一の国籍国の保護を受けなかったとしても、国籍国の保護がないとは認められない。
補完的保護対象者の認定又は不認定
補完的保護対象者の認定をしたとき → 「補完的保護対象者認定証明書」が交付される。
補完的保護対象者の認定をしないとき → 「理由を付した書面」で通知する。
(一時庇護のための上陸の許可)第十八条の二第一項一号ロの新設
入国審査官が一時庇護のための上陸の許可をすることができる場面として、現行法第十八条の二第一項第一号では、「その者が難民条約第一条A(2)に規定する理由その他これに準ずる理由により、その生命、身体又は身体の自由を害されるおそれがあった領域から逃れて、本邦に入ったものであること。」としていましたが、第一号ロとして「その者が迫害を受けるおそれがあった領域から逃れて、本邦に入ったものであること。(イに掲げる者を除く。)」が加えられました。※イは現行法1号
補完的保護対象者の認定の取消
補完的保護対象者の認定は次の場合、取り消されます。
- 偽りその他不正の手段により補完的保護対象者の認定を受けたこと。
- 難民条約第一条C(1)から(4)までに掲げる場合のいずれかに該当することとなったこと、補完的保護対象者であると認められる根拠となった事由が消滅したため、その者の国籍の属する国の保護を受けることを拒むことができなくなったこと又はその者が国籍を有しない場合において、補完的保護対象者であると認められる根拠となった事由が消滅したため、常居所を有していた国にもどることができることとなったこと。
- 補完的保護対象者に認定を受けた後に、難民条約第一条F(a)または(c)に掲げる行為を行ったこと。
難民条約第一条C
(1)任意の国籍国の保護を再び受けている場合
(2)国籍を喪失していたが、任意にこれを回復した場合
(3)新たな国籍を取得し、かつ、新たな国籍国の保護を受けている場合
(4)迫害を受けるおそれがあるという恐怖を有するため、定住していた国を離れ又は定住していた国の外にとどまっていたが、当 該定住していた国に任意に再び定住するに至った場合
難民条約第一条F
(a)平和に対する犯罪、戦争犯罪及び人道に対する犯罪に関して規定する国際文書の定めるこれらの犯罪を行ったこと。
(c)国際連合の目的及び原則に反する行為を行ったこと。
(送還先)第五十三条
退去強制を受ける者の送還先として、難民条約第三十三条第一項に規定する領域の属する国に加え、「その他その者が迫害を受けるおそれがある領域の国」が除かれました。
難民条約第三十三条第一項 締約国は、難民を、いかなる方法によっても、人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見のためにその生命又は自由が脅威にさらされるおそれのある領域の国境へ追放し又は送還してはならない。
(難民の認定等を適正に行うための措置)の新設 第六十一条の二の十五(努力義務)
難民の認定等を適正に行うための措置として、「法務大臣は、難民の認定及び補完的保護対象者の認定を専門的知識に基づき適正に行うため、国際情勢に関する情報の収集を行うとともに、難民調査官の育成に努めるものとする。」という努力義務規定が新設されました。
保護すべき者を確実に保護
補完的保護対象者の新設により、
- 紛争避難民など、難民条約上の難民ではないものの、難民に準じて保護すべき外国人を「補完的保護対象者」として認定し、保護することができる。
- 補完的保護対象者と認定された者は、難民と同様に安定した在留資格(定住者)で在留できる。
とされていますが、実際にどのように運用されるかは、これから改正法が施行されてから様々な検証がなされることでしょう。
真に保護されるべき人々が保護されるべく、適正な運用がなされることを期待します。
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